クローズアップ現代「ブンガクに異変アリ!?(笑)〜台頭する若手作家たち〜」

随分前に、NHKのクローズアップ現代で、
若手作家ブームついての特集があった。
内容がなかなか興味深いものであったので、
その内容の備忘録を日記に残す。


No.2047 3月7日 月曜日
「ブンガクに異変アリ!?(笑)〜台頭する若手作家たち〜」


解説は高橋源一郎(敬称略以下同)。
若い世代で活字復活の兆しが見え、
若い世代の作家が輩出している。
綿矢りさ金原ひとみ島本理生羽田圭介日日日
らが紹介され、特にピックアップされたのが、
白岩玄、河崎愛美の二人。


白岩は初めて書いた小説が受賞し、
彼の読書は漫画中心で、小説はほとんど読んだことがない。
彼によれば、
「読んでなかったところがかえって良いように働いた」
とのことだ。
また、受賞作『野ブタ。をプロデュース』は、
「〜いったんCMに入りそうだ。」
つんく♂のような〜」
というようなイマドキの表現が多々用いられていると、
番組では紹介していた。
もう一人の河崎は、携帯メール小説の分野から輩出した人物で、
現役女子高生。直球の表現が若い世代に受けているらしい。


さて、解説の高橋によると、
新しい文学、特に20代以下の作家の潮流は、
文学神話の崩壊し、彼らにとって、
書くことが大変なことではないと考えはじめた
ことが契機なのではないか述べた。
さらに、インターネット、携帯メールの普及によって、
一般の普通の人でも、書く場所、経験が増えたため、
書くという行為の神秘性の消失した。
これに30代以降は圧倒されている。
インターネットでは、10万人が書いて10万人が読むような
双方向性が可能である。


●人気の原因 高橋による分析。


1. メール的口語文体
おしゃべりするように書く。
短く、思いのまま。
例として『蹴りたい背中』が取り上げられた。


2. マンガ的音表現
マンガ的な擬音語の多用。
例として、佐藤友哉の『クリスマステロル』。


3. 歌詞的繰り返し
例として、西尾維新の『ネコソギラジカル』の
クライマックスシーン。


4.共通したテーマ  生きにくさとサバイバル
例として、日日日の『ちーちゃんは悠久の向こう』があげられ、
作中の悲惨な日常はバブル崩壊後の世相を反映したもの。
白岩の『野ブタ。をプロデュース』も、
凡庸な生徒がある事件をきっかけに悲惨なイジメにあう。
このように、日常=サバイバルの構図となっている。


これらは、90年代の不況、
阪神淡路大震災地下鉄サリン事件
神戸連続児童殺傷事件、などの国内の凶悪犯罪。
アメリ同時多発テロなどの悲惨な事件。
今日よりも明日が悪くなる、
希望なき時代、生きていくことが難しい。
壁なき閉塞感と目標とする作家の不在
などに大きく影響されている。
若手作家たちは、日常の利用できるものを文学に表現する
この潮流は文学ビックバンと呼べるもので、
情報化(IT)社会の進展は逆説的に文字、言葉の重要性を増す。
文学の未来は明るいのではないか?
と、締めくくられる。


なかなか興味深い考察で、
解説の高橋は今は評論活動が中心だが、
かつてはポストモダン小説の旗手だった。
なんだか開高先生を連想してしまう、著作経歴だ。
今までは評論とエッセイしか読んでなかったが、
今度、小説の方を読んでみようと思う。