2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「決断主義」なるものの再検討(4)

本当は『コードギアス 反逆のルルーシュ』を 『ハムレット』を引き合いに批評の遡上にあげるつもりだったのだが、 まだ完結していない作品を論じるのは気が引けるので、 少しだけ触れてお茶を濁したい。 まず、『コードギアス』の作り手たちが 『デスノート…

「決断主義」なるものの再検討(3)

●夜神月――空虚にして凡庸なる「大衆人」 宇野常寛氏の「ゼロ年代の想像力」において 夜神月は「決断主義」的主人公に分類されている。 それでは、彼は何を決断したのであろうか。 「決断」などと評されるからには、 何かしらの目標や動機があってもよさそう…

「決断主義」なるものの再検討(2)

●精神思想の日本“近代化”史 我が国は二度の近代化を経験した。 一つは明治維新、いま一つは敗戦と復興である。 そして、その両方ともが、 強制と移植によって近代化を達成している。 「近代」が生み出しそれを支えてきた諸概念 ――自由主義、個人主義、資本主…

「決断主義」なるものの再検討(1)

●前書 実際の話、諸君が大衆に向かっていかに個人の自我実現を教えようとこころみたところで、彼等は万事が語られ行われたのちにも、所詮は断片的な存在にすぎず、到底全き個人たることはできぬのであるから、畢竟、諸君のなしうることは、彼等を実に嫉妬深…

「セカイ系」と「逃避」の本質

●現代の迷信 迷信の時代とは知っている以上のことを 知っていると人々が想像する時代なのです F・A・ハイエク 『自然・人類・文明』 素敵です、と言われても何だか返事に困るが、 先日の覚書が「セカイ系」を中心に読まれているようなので、 今日は「セカイ…

「ゼロ年代の想像力」に寄せて

今日の著作家は長い間研究してきたテーマについて書こうとペンをとる際に、次のようなことを念頭に置いておくべきである。つまり、そうした問題について一度も考えたことのない普通の読者がたとえ彼の著作を読むにしても、それは彼から何か学ぼうとするため…

「パッチギ!」(04年/日本)

この映画に対する評価は難しい。 いくつかの欠点と事実と異なる描写が含まれているためだ。 それはまず「イムジン河」が発禁されたというくだりである。 「イムジン河」が販売自粛及び廃盤になったのは 朝鮮総連の抗議によるところが大きい。 最後の方の場面…

「私の頭の中の消しゴム」(04年/韓国)

若くしてアルツハイマーになり、次第に全てを忘れていくヒロインと 主人公との間の悲劇を描いた話が本作である。 前半部はラテン系の音楽をBGMにしたラブコメ風で、 後半部はうってかわってシリアスなお話になるのだが、 この記憶をめぐる描写がどこまで…

「最期の同窓会」(93年/日本)

このドラマは過去を振り返ることで、あるいは顧みることで、 現在を見つめなおそうとするドラマである。 同時にこのドラマは過去を克服しようとする。 ヒロインは6年前に離婚して母子家庭にあるが、 彼女は今もってそれを清算出来ていない。 彼女にとっては…