2006-01-01から1年間の記事一覧

思想風景

普段何気なく暮らしていると、 ふと周囲を見回せば、 風景が一変している事に気が付き、 大変驚かされる事がある。 同様に思想風景というものも、 一種の流行なようなものであるから、 やはり気が付くと原風景を 留めていない時がある。 元より原風景などな…

宮台真司「アンチ・リベラル的バックラッシュ現象の背景」

■昔からフランクフルト学派の人たちが言ってきた通りで、権威主義者には弱者が多い。これは統計的に実証できます。私の在職する大学で博士号を取得した田辺俊介君の博士論文『ナショナル・アイデンティティの概念構造の国際比較』(2005)が、ISSP(国際…

NHK『日本の、これから』

NHKの特番の『日本の、これから』を見た。 案の定、たいして面白くなかった。 以前からNHKは視聴者参加型の 番組の試みを続けてきていたが、 例の不祥事の後、 とみにこのタイプの番組を重視するようになった。 その姿勢の低さには見ていて痛ましさす…

永井荷風「十九の秋」、「妾宅」

当時わたくしは若い美貌の支那人が、辮髪の先に長い総のついた絹糸を編み込んで、歩くたびにその総の先が繻子の靴の真白な踵に触れて動くようにしているのを見て、いかにも優美繊巧なる風俗だと思った。はでな織模様のある緞子の長衣の上に、更にはでな色の…

朝日新聞社説「開戦65年 狂気が国を滅ぼした」

8月は一年で最も重苦しいようで、 実の所、最も浮ついた時期なのではないかと思う。 誰も彼もがこの時期になると、 あの戦争の事を思い馳せる様になるらしい。 陰惨な悲劇も年月を経ることで、 ただの年中法事と大差が無い様になった。 キリスト教徒でもな…

世界史と地政学

世界史なるものは存在しない。 それが曖昧ながらわたくしを 支配してきた歴史観であった。 事実として世界史なるものはなく、 あるのは世界史的という解釈のみである。 そもそも歴史観や歴史認識という言葉すら わたくしは否を唱えていた。 時間という空間的…

少子化問題

近年、大きく“問題”として 取り上げられているのが「少子化」である。 国力及び経済拡張の観点から見た場合、 それは確かに大きな“問題”である。 経済的には市場規模が縮小されるわけだし、 国力的にも昔から言われるように、 人口とは国力なのであり、 若年…

中高地歴公民教科書

日を追う毎に深刻な実態が 白日に晒されつつある問題ですが、 ある種、滑稽な喜劇じみて見えます。 カリキュラムを組んだ教員の 苦肉の策の結果でありましょうが、 結果としてみれば善意から生じた悪行と言えましょう。 今回の事件で入試制度や教育制度を問…

『交響詩篇エウレカセブン』

●ネタバレあり 再放送を見終えて今一度整理してみる。 あの終わり方に関して、 やはり色々と意見が出たようだ。 本作の脚本家は意図を理解されなかった、 と聞き苦しい弁明をあちこちで述べているようだが、 実際理解されたとてそれが果たして 本当に良いと…

『国家の品格』の読者について

「諸君らはこんな物で満足できるのか?」 「こんな物を求めているのか?」 「一体どうありたいのか?」 「一体何がしたいのだ?」 我輩が何故ここまで激しく、偏執的までに 批判するのかと貴方は思うかもしれない。 無批判に受容してしまう人々に対して 我輩…

『国家の品格』の書評

小生はブログ中毒ではないので、 連日のアップに少々疲れてしまった。 今日は断章取義で楽をさせてもらいたい。 『国家の品格』を批判的な書評の内、 秀逸な物をいくつか紹介する。 興味深い意見も多く、 言及しながら批評する事も考えたが、 どうにもスタン…

藤原正彦『国家の品格』

前2本のエントリで大体、言いたい事は述べたので、 今日は補遺、補足的な内容を。 まず、前日のエントリは長文引用で筆を置いたので、 何かしら意見を挟んで置かないと収まりが悪そうだ。 第一の引用部は、 藤原正彦氏の根本的な思想課題の 認識不足に対す…

藤原正彦『国家の品格』

『国家の品格』を良書だと思った人々に対して、 どのように話せば分かって貰えるだろうか、 どれくらい言を尽くせば納得していただけるであろうか。 細かい誤りを指摘したとしても、 多くの人は見向きもしないでしょう。 何故なら彼らが受け入れたのは、 元…

藤原正彦『国家の品格』

藤原正彦氏の著作『国家の品格』がいまだに売れている。 批判するには時機を逸した感が拭えないが、 この際だから色々とまとめておこうと思う。 とりあえず本日は内容を含む、 基本的な誤りの批判。 本書の問題は偏りがあるだとか、右寄りだとか、 感情論だ…

哲学者の神話的伝説

我々が知っている哲学…… もっと卑俗的に言えば哲学史的“知識”の中には、 伝説的あるいは神話的なものが多々含まれている。 例えば、ソクラテス。 彼の有名な言葉、 「汝、汝自身を知れ」 「悪法も法である」 この二つともがどうやら事実誤認であるようだ。 …

表現における「生」と「死」の問題

「生」と「死」の概念は宗教的である事が多い。 神秘主義を殊更非難し、否定する訳ではないが、 誰も彼もがそれを信奉する訳にも行かないだろう。 第一、無神論者であろうが、狂信者であろうが、 神秘主義者であろうが、何時かは死ぬ。 否応無く生まれ、死ぬ…

さるファンサイトの書き込みの傾向と分析

あるファンサイトの書き込みを見ていると、 ある種の傾向が感じられる。 一つ目は盲目的愛、 二つ目は親近的愛、 三つ目は単一的愛。 一つ目に関しては、 あまりよい表現ではないが、 信者的というか、 一種の信仰表明に見えるような 書き込みが散見できる。…

F・ブローデル『物質文明・経済・資本主義 日常性の構造』

最近、フェルナン・ブローデルという フランスのアナール学派の中心的な歴史家の主著である 『物質文明・経済・資本主義 日常性の構造』を読みました。 多少オーバーに表現すれば、それは私の蒙を啓いてくれました。 特に感銘を受けた部分を要約すると以下の…

『Wikipedia』

ウィキペディアが本と言えるかどうかは不明だが、 ウィキペディアをレビューしてみる。 ネットの百科事典ウィキペディアは 実に便利で面白い読み物である。 トリヴィアルに面白いので、 毎日のように意味も無く調べ物をしたり、 新着記事のチェックに余念が…

クローズアップ現代「ブンガクに異変アリ!?(笑)〜台頭する若手作家たち〜」

随分前に、NHKのクローズアップ現代で、 若手作家ブームついての特集があった。 内容がなかなか興味深いものであったので、 その内容の備忘録を日記に残す。 No.2047 3月7日 月曜日 「ブンガクに異変アリ!?(笑)〜台頭する若手作家たち〜」 …

プロットについての私的覚書

「展開」と「構成」は作品において もっとも重要な要素の一つであるが、 その区別は少々曖昧であるように思われる。 思うに、「構成」とは、 見取り図であり、あるいは設計図であり、 また、骨組みでもある。 一方、「展開」とは、 工程図、あるいは作業手順…

暴力ゲーム規制

随分と前に、NHKのクローズアップ現代が、 「ゲームは子供に有害か?」(No.2150)という題で、 昨年6月に神奈川県がGTAⅢを有害図書に指定して、 販売規制に乗り出し、波紋を広げている問題に関して放送していた。 それに関する賞味期限の切れた考察…

乙一「愛すべき猿の日記」

出版されてから随分と時間が経ってしまいましたが、 『パピルス』創刊号に掲載された、 乙一著「愛すべき猿の日記」のレビュー。 なお、かなりネタバレを含みますので、 未読の方は読まないほうがいいと思います。 所詮、素人書評、批評に過ぎませんので。 …

ドラマ化するアニメ

かつて、映画監督の押井守は、 CGの登場により、実写とアニメは 融合して区別できなくなるという持論を展開していた。 彼は映像表現として、 アニメとCGの融合、 レンズの概念をアニメに取り入れるなどの、 実写的要素をアニメに導入した人物である。 彼…

永井荷風「妾宅」

近代化とはヨーロッパの強制の結果であり、 前近代の眠りを覚ましたのは黒船であった。 仮に黒船が来なかったのならば、 いまだに江戸時代が続いていても不思議ではない。 それほど「近代」という時代や精神は「特殊」な物なのである。 「普遍」や歴史法則と…

断腸亭主人

永井荷風という人は 反時代、反社会的に生きながら、 その事に自覚的な人なので、 その文章は実のところ、「情」より「理」が勝っている。 「理」の世界から逃避して、 「情」の世界に埋没しなかった人、 それが「近代人」荷風なのだと思う。 この辺が欧化主…

近代的自我と視点(人称)の問題

日本語の特徴に一人称の種類が多いということがある。 西洋語はおおむね一人称が 英語であれば「I」, ドイツ語であれば「Ich」 という具合に統一されているのだが、 日本語だと、 私、僕、我輩、小生、朕、余、我・・・・・・ などと無数に存在している。 隣…

人形についての断章

神はその似姿として人を作ったという。 それは土くれで出来た人形だった。 我らは自然より切り抜かれ、 魂を与えられた。 故に我らは生まれながらにして、 自然からは隔てられた存在である。 『ローゼンメイデン』というアニメがある。 生きた人形(アンティ…

『交響詩篇エウレカセブン』

今更だが、『エウレカ』についての断章。 どうも『ガンダム』の主要キャラと かぶるように思えてくる。 我が妄想は下記の通り。 ・ホランド=アムロ(青年期) ・デューイ=シャア ・ダイアン=ララァ ・タルホ=チェーンorベルトーチカ ・ドミニク=ハサウ…

2006年米アカデミー賞の感想

少々古い話題だが、 今年度のアカデミー賞について振り返る。 今年のアカデミー賞は例年に無く、 社会派の硬派な映画が多数ノミネート、受賞されていた。 作品賞の「クラッシュ」は、 いまだ米国において深刻な人種問題を。 ジョージ・クルーニーが助演男優…